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Perfume “コールドスリープ”という名の解散。活動再開はどのようになるのか?

2025年9月21日、Perfumeは年内の活動をもって休止することを発表した。

活動休止はいつから決めていたのか

もともとはデビュー20周年となる2020年に活動休止する予定だったが、何らかの理由で継続を決めたと思われる。2019年の『再生』の歌詞「結局ぜんまいは巻かれた」は、「活動休止するつもりだったが継続することにした」という意味だろう。

2019年9月にベストアルバム「Perfume The Best “P Cubed”」を発売。2020年2月に全国ツアーを行ったが、千秋楽の東京ドーム公演は政府の緊急事態宣言によって当日に中止となった。その後に予定されていた東京五輪開会式でのパフォーマンスも、大会延期と電通のクーデターのような形で実現しなかった。

2023年秋にあ~ちゃんが尾骶骨を骨折したのは活動休止を決断する一つの契機だったかもしれない。その後、活動休止の兆候は顕著になっていった。

  • 2024年から、Perfume三人のタレントとしてのソロ活動が活発化した。
  • 2025年3月から、中田ヤスタカがFRUITZ ZIPPER やPiKiといった自身の所属する事務所アソビシステムの若手タレントに楽曲提供を始めた。
  • 2025年7月、NHKの番組SONGSにて、中田はPerfumeに「餞の言葉」と思われるメッセージを送った。
  • 2025年8月、中田ヤスタカとの別れを示唆する『巡ループ』のMVを公開。

一年以上かけて活動休止を匂わせながら、東京ドーム公演の前日に休止を発表するとは何とも奥ゆかしいやり方だ。

ネビュラロマンスの世界観を反映した曲の中で最も古いものは『Moon』(2023-09)であり、「Forever dance」という歌詞がある。中田ヤスタカはネビュラロマンスの物語の構想をその年の春には持っていたと推測される。この構想に最初から「Perfumeの活動休止」が織り込まれていたとすれば、2023年初頭には活動休止の方針が決まっていたとさらに推測される。

ネビュラロマンス Episode 1 ツアーは、チケット完売には至らなかったようだ。東京ドーム公演も活動休止が発表されるまでは私の懸念どおりチケットは売れ残っていた。活動休止の発表後は売り切れとなり、チケットを手に入れられなかったファンが東京ドームに駆けつけるほどだった(いわゆる音漏れ参戦)。ネビュラロマンス Episode 1 ツアーの観客動員数が伸びないことは先のPLAZMAツアーの興行成績からも予想できたことなので、ツアーを始める前に活動休止を発表した方が収益面では正しかった。

Perfumeの今後の活動

ネビュラロマンスの中田の原案では、カキモトだけでなくPerfume三人を巻き込んで消滅するという筋書きだったようだ。キキモは人間に戻ったが、Perfumeとは別の世界にいるため、触れ合うことはできない。このことから、Perfumeは中田とMIKIKOから独立することを決断したのだ言える。

音楽活動をやめるのなら解散とほぼ同義である。東京ドーム公演の「逆GISHIKI」は解散を印象付けるパフォーマンスであり、実質的な解散と言って良い。毎回趣向を凝らしたライブを作り上げるのがPerfumeチームだから、出口戦略についても数年前から入念に考えていたに違いない。その結実が『ネビュラロマンス』という二枚のアルバムだったのだろう。

Perfumeが活動再開するとき、どのような形になるのだろうか。東京ドーム公演は「SEE YOU AT THE NEXT STAGE」というメッセージとともに終演したが、「NEXT STAGE」が音楽活動を意味するとは限らない。彼女らの年齢を考慮すれば、ハイヒールを履いて激しく踊る今までの活動を再開することはないだろう。将来の活動内容として考えられるのは、次の通り。

  • これまでのダンスを3Dモデルで再現
  • ラジオやテレビのパーソナリティ
  • Perfume Closetや化粧品といったPerfume ブランドを活かした女性向け商品の展開
  • 新たな音楽家・振付家を迎えて歌手・ダンサーとして再出発
  • 新たなダンスグループの発掘・プロデュース

ネビュラロマンス後篇の曲の歌詞をを読み解くと、3Dモデル化を狙っているように思える。『巡ループ』の「あの日の僕たちが巡ループ」、『Teenage Dreams』の「戻ろう あの頃に」、『exit』の「僕らの神話の間違い探し」や「始まりの時へと 戻れば」は過去のダンスを再現するということ。『ネビュラロマンス』の歌詞の「永遠に踊る」とは3Dモデル化すればPerfumeにいつでも会えるということ。

ファンの問題

Perfumeは20年以上活動しているだけに、「Perfumeが人生そのもの」というファンという人は多い。解散の可能性を指摘する話題に対しては、感情的に反発する人が見られたが、彼らはPerfumeに対して愛ではなく依存しているのだ。熱狂的なファンがもたらす収益は大きいはずだし、人柄の良いPerfume はファンの期待に応えたいと長年努力してきた。しかしそれも限界が来たようだ。

Perfume は活動休止を「コールドスリープ」と呼び、必ずファンの前に戻ってくることを約束した。一年以上かけて活動休止を示唆しつつ、「解散」はおろか「活動休止」という言葉すら最後まで明言しなかったのは、おそらくPerfumeに依存するファンの精神的衝撃を緩和したいという意図だろう。まさに立つ鳥跡を濁さず、である。

筆者のファン活動

私がPerfume のライブに参加するようになったのはPLAZMAからである。ファンクラブには所属せずに、再販売されたファンクラブ一次抽選のチケットを買っていた。

2025年8月に公開された『巡ループ』のMVを観て活動休止が近いことを悟り、2日分の東京ドーム公演のチケットを購入した。活動休止の発表は予想通りだったので驚きはなかった。

東京ドーム公演に加えて、ファン主催のDJ イベント「PYYOU」にも2日間参加した。むしろこちらの方が楽しめた。

東京ドーム公演の最終日に帰路につく途中、メールを確認すると、大阪万博のNTTパビリオンの7日前抽選に当選したという通知が来ていた! 9月30日に万博を訪れて、NTTのIOWN技術を生かしたPerfumeのダンスを鑑賞できた。私が訪れたパビリオンの中ではダントツの魅力だった。

中田ヤスタカ・CAPSULE・Perfume・などのマニアックな情報をまとめたサイト紹介

ystk archive

中田ヤスタカのこれまでの仕事にまつわる、公式のウェブサイトやSNSでは手に入らないようなマニアックな情報・記録が掲載されている。

インタビュー – TOWER RECORDS ONLINE

Perfumeのブレイクをきっかけに世間からの注目が集まりだしていた頃の中田ヤスタカへのインタビュー記事。Perfume以外のアーティストへ提供した楽曲も多く紹介されている。

アイドルと記憶

ノッチ森永氏の個人ブログ。内容はPerfumeを中心として、中田ヤスタカの少年時代に触れた記事もある。

SONY WF-1000XM4でMP3 (320k bps) vs FLAC (Lossless)を聴き比べ

2023-09に完全分離型のヘッドホン「SONY WF-1000XM4」を購入した。これは3万円程度する高級なヘッドホンである。

音楽のファイル・フォーマットとして主にMP3 (320k bps)とFLAC (Lossless)が用いられている。FLACはCD音源を可逆圧縮したフォーマットなので音質の劣化がないのに対して、のだが、MP3は非可逆圧縮なので劣化を許容したフォーマットだ。とはいえ、多くの人にはMP3 (320k bps)とFLAC (Lossless)の音質の違いは聴き分けられない。

WF-1000XM4を使い始めてからこれらのフォーマットの音質の違いを聴き分けられるようになった。また、同じ曲でも収録されているアルバムが異なると音も微妙に異なる。具体的にどこが違うのかを記録しておく。

CAPSULE (作曲:中田ヤスタカ)

東京喫茶

冒頭のガラスの音はFLACの方が立体感がある。

プラスチックガール

2:05辺りから始まるボーカルはFLACの方が位置が明確。

GO! GO! Fine Day

冒頭から右から聴こえるトランペットの音はFLACの方が位置が明確。

ポータブル空港

1:35辺りから始まるボーカルの位置はFLACの方が明確。

宇宙エレベーター

0:44辺りの右から聴こえるドラム音はFLACの方が明確。

Super Scooter Happy

0:15のエンジンをかける音や4:25のオルガン風の音は、FLACの方が立体感がある。

レトロメモリー

ドラムの高い金属音はFLACの方が再現性が高い。

A.I. automatic infection

左から聴こえるタンバリンのような音がFLACの方が明瞭。

Lucky Love

0:10から聴こえるタンバリンのような音がFLACの方が明瞭。

happy life generator

3:35のタンバリンの音はFLACの方が明瞭。

空飛ぶ都市計画

2:30辺りから始まるストリングスは、FLACの方が音の位置が明確。

テレポテーション

2:15辺りの左から聴こえるタンバリンのような音がFLACの方が明確。

twinkle twinkle poppp!

全体に渡ってFLACの音質の良さが分かりやすい曲。特にサビは声の立体感が明確。

FRUITS CLiPPER

3:05辺りから、右から聴こえるギター音の位置がFLACの方が明瞭。

jelly (album-edit)

0:45から始まる歌声はFLACの方が臨場感がある。

dreamin dreamin

3:50あたりから始まるストリングスはFLACの方が立体的。

e.d.i.t.

冒頭のリズムを取っているシャリシャリ音の解像度がFLACの方が高い。

Perfume (作曲:中田ヤスタカ)

チョコレイト・ディスコ

冒頭の囁き声はFLACの方が立体感がある。

SEVENTH HEAVEN

2:00辺りから始まるユニゾンは、FLACの方が各人の音の位置がより明確。

マカロニ

2:10辺りの「いいよね」の音がFLACの方がより明確。

セラミックガール

0:50辺りの「新しい世界で自分を隠して」の音の位置がFLACの方がより明確。

シークレットシークレット

1:20のかしゆかの「いつか抱きしめたいでしょ」の音の位置がFLACの方がより明確。

アルバム『GAME』に収録されている本曲は1:17のベースが強すぎて不快だが、ベストアルバム『P Cubed』に収録されているものは少し緩和されている。

Spring of Life

冒頭の歌声の音の位置がFLACの方がより明確。

Party Maker

「MP3 (320k bps) vs FLAC」ではないが、アルバム『LEVEL3』に収録されている本曲は7:14辺りに音飛びがある。ベストアルバム『P Cubed』に収録されているものは修正されている。

If you wanna

「MP3 (320k bps) vs FLAC」ではないが、ベストアルバム『P Cubed』に収録されているものは出だしが音割れ気味に感じた。アルバム『Future Pop』に収録されているものが好き。

Spinning World

この曲はアルバム『PLASMA』に収録されているが、このアルバムはかなり音にこだわりを持って作製されたようで、音質の違いが明確に分かる。特にボーカルの音の位置がFLACだと明確だ。

きゃりーぱみゅぱみゅ (作曲:中田ヤスタカ)

チェリーボンボン

3:15辺りから右から聴こえる打楽器の音の解像度がFLACの方が高い。

きゃりーANAN

0:06から始まる声の位置がFLACの方が明確。

tofubeats

CAND¥¥¥LAND feat. Liz (Pa’s Lam System remix)

FLACだと、3:25辺りの音が近づいたり遠ざかったりするのが分かる。

Daft Punk

Give Life Back to Music

1:25辺りから始まるギターの音の位置がFLACの方が明確。

私のオススメ ”Super Scooter Happy” by CAPSULE (中田ヤスタカ)

「Super Scooter Happy」は、CAPSULEが 2004年6月に発表した曲だ。 アルバム 「S.F. sound furniture」に収録された。

当時のCAPSULEのレトロフューチャー志向を反映して、5月にLP盤が先に発売されている。CDに収録された方も意図的に音質を僅かに抑えている。

私はCAPSULEと中田ヤスタカのファンだが、その数ある曲の中でも この曲はトップ3に入るお気に入りだ。

批評

歌詞の内容から考えると、女の子がこれから恋人に 会いに行くので、オシャレしてバイクに乗っている最中の気持ちを表現した曲だ。

この曲が凄いのは、その驚くべき臨場感の高さである。この曲を聴いていると、この女の子の躍動する感情が私の心にまで流れ込んでくるのである。それだけでなく、バイクに乗って東京の街を気持ちよく走る情景がありありと浮かんでくる。そんな曲は他に思いつかない。

それにしても作曲者・中田ヤスタカ がここまで女の子の感性をうまく表現させられるのが不思議で仕方ない。この曲は様々な点で彼の天才ぶりを感じられる曲でもあるのだ。

2005年までCAPSULEはガーリーポップ路線をひた走っていたのだが、この曲はその金字塔と言って良い。

そんな訳でとにかく陽気でノリノリになれるこの曲なのだが、ここまでノリノリになれるのは小気味よいベースのお陰だと思う。ぜひ皆さんには低音を強めにしてこの曲を聴いてほしい。私は、新しいヘッドホンを買ったら初めに 必ず再生機器のイコライザーを調整するのだが、ベースの強さはこの曲を基準にしている。

この曲によく似た趣向を持つ曲として、2001年に発表されたCAPSULE初期の名作「東京喫茶」がある。

きゃりーぱみゅぱみゅのカバー

本曲はきゃりーぱみゅぱみゅが好きな曲として挙げている。確かにきゃりーっぽい雰囲気の曲でもある。そして、彼女は2013年にこの曲をカバーしていて、こちらは更にきゃりーっぽい雰囲気にアレンジされている。

CAPSULEよりきゃりーの知名度の方が圧倒的に高いことを反映して、このカバー曲の方が原曲より知名度が高く、中にはこのカバー曲が原曲だと勘違いしている人すらいる。私は断然原曲の方が気に入っているけどね。

Perfumeの活動の考察

Perfume人気の退潮

Perfumeの人気はコロナ禍を境に下がっていっている。

  • 販売したアルバムのオリコンチャート記録は、2008年の『GAME』から6作連続で1位を取ってきたが、『PLAZMA』と『ネビュラロマンス前編』は1位を逃した。
  • NHK紅白歌合戦へ2008年から16年連続で出場を続けていたが、2024年はその記録が途切れた。

Perfumeのワンマンライブでは最新鋭の技術が活用されており、費用は他のアーティストのライブより高い。十分な集客ができなければ赤字に陥りやすいため、人気が落ちるとライブ活動の継続が困難になる。

巡ループのMVが示唆すること

ネビュラロマンスの世界観では、カキモトは音楽プロデューサー・中田ヤスタカ、キキモは振付家・MIKIKOに相当する。

巡ループのMVが示唆しているのは、中田ヤスタカとの契約解除、それに伴う音楽活動の休止だろう。キキモが壊れゆく世界に残ることを選んだということは、MIKIKO監修のダンスも見納めになるということだ。

PerfumeチームがわざわざそれをアルバムやMVを通して伝えようとしたのは、突然発表することでファンが衝撃を受けることを緩和したかったからだろう。