高校数学 東京工業大学2005 (平成17)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

本年度の最難問。(2)までは簡単だが(3)は発想力を要する。

(1)

(log x)n = x’・(log x)nとして部分積分すると2項間漸化式が出てくるので番号下げしたものと組み合わせる。(log x)n = (x log x -x)’・(log x)n-1 として積分してもよい。

(3)

与式を見てウォリス積分「n In = (n -1) In-2」を連想すれば筋が良い。a2 = e -2が式中に現れている事からも気づける。ところが持ち合わせている関係式が3項間漸化式だから上手く変形できない。数学的帰納法も使えない。

そこで、不等式の柔軟性を利用して2項間漸化式に作り替えてみよう。

与式は項が偶数である。そこで(1)式an = (n -1) (an-2 -an-1)の an-1を(2)式を利用してan に置き換え、 an < (n -1) (an-2 -an) としてみる。するとウォリス積分と同じ形式になった!

数列の不等式を証明するために、処理し易いように数値や項を入れ替えるのはお馴染みのテクニックだ。

ウォリス積分自体が応用的内容だが、それを知った上で更に応用した問題だった。解けたとしても試行錯誤の末に辿り着くはずなので時間が掛かる。解けないなら(2)の条件を満たしている事だけでも示して部分点を狙おう。

第3問

Cは円ではなく円周なので注意。もしこれが円であれば、体積は積分せずに4πと計算できる。

難易度は標準的で、シンプルな問題設定でありながら置換積分など微積のテクニックを要する東工大らしい問題。

sin θ cos2θは-cos3θ /3と積分できる。

扇形の面積は一般にθが含まれ、これは置換できない。つまり扇形が含まれる求積問題はθで積分する事を予見できる。したがって最初からθで断面積の関数を作れば、置換する手間を省ける。一部の項のみ置換するという方法もある。

第4問

有名問題「閻魔の唇」のアレンジで、線形計画法を盛り込んでいる。

高校物理 東京工業大学2013 (平成25)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

今年度辺りから問題は基本的だが深い理解を問う形式に変化してきた。簡単なようで意外と思考力を要し、各予備校も評価を誤った。

[1]

(a)

エネルギー保存則の式を変形して「vA2 -vA2 = vB2 -vB2」、運動量保存則の式を変形して「vA -vA‘ = vB‘ -vB」 とすれば煩雑な計算を回避できる。二次式を差の形に誘導する数学的テクニックだ。

2物体の弾性衝突と同じように速度が交換するのが面白い。

(c)

〔B〕では速度に動摩擦力、重力の影響が加味された。

(d)

このような条件下でも、紐の撃力による速度交換が起きる。

文字T1は中問では与えられてないので使ってはいけない。

(e)

重力gに慣性の加速度が加わり見かけの重力√(g2 +a2)となる。そして「十分に振幅の小さな周期運動」とあるから単振り子の公式に当てはめる。

(f)

周期性があり、バネの挙動に似ている。

加速度運動の影響を除けば運動量保存則が成り立っている。

[2]

(b)

実験の様子をイメージすると、棒2がx正向きに力を受け加速する一方で、棒1はx負向きに力を受け減速する。これによりいずれ両棒は速度が一致する。

起電力を発生させる因子は、V = vBl より「棒の速度」「磁束密度」「棒の長さ」の三つだ。電流が0という事は起電力の総和が0という事であり、v1 -v2 = 0と分かる。

電流が流れてないからと言って、電位差が0とは限らない。それは棒内の電子におけるローレンツ力の発生を考えると分かる。二つの棒が磁場中を動くから逆向きの誘導起電力を生じるのだが、二つの電池を逆向きに配置している様なものなので、レール間で電位差が生じるのだ。当然ながら、磁場中でなければ電位差は生じない。

(d)

  • (オ)(b)が足掛かりになっている。運動量 = 力積の等式を使うだけだ。
  • (カ)IとΔtからΔqを連想し、そこからCを使う事を考えよう。
  • (キ)マイナスが付くのに注意。

(e)

(b)の応用。

[3]

(b)

(カ)は発想を要する。LAC -LBC≒da /L というヒントや、Sをlずらしてもスクリーン上のdズレた位置では光路差が不変である事実から、光路差について立式しよう。

(c)

(ケ)は煩雑な三角関数の計算が必要だが、そこまで手が回らないだろう。

高校数学 東京工業大学2004 (平成16)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

(1)は非常に簡単なのだが、これが(2)の誘導になっている事に気づくのが重要。(2)の与式を微分して(1)の形に変形していく。


g(x) の二つの極値を g(α), g(β)とすると、 g(α) < lim x→a g(x) < g(β) となっている場合はこの区間の全域で「3点で交わる」と言えないので、確認する必要がある。lim x→∞ g(x) についても同様である。

こういった細かい議論は見落としがちなので、グラフを描いておくのが手っ取り早い…今回の場合はg(x)である。これで減点も防げるし、見直しにもなって一石二鳥だ。

第2問

「前小問の数式に合わせて式変形して証明する」という問題で、2006年度第一問とよく似ている。

(1)

合成関数、そして偶関数のf(x) = f(-x)という性質がテーマの問題。

sin x, cos xが2π周期の周期関数なので、f(sin x), g(cos x) も 2π周期の周期関数になる。y = sin xと置いたとき、2π周期という性質はyが持っており、f(y) = f(sin x)にその性質が反映されるのだ。

与式を読み解くと、「[0, mπ]における面積は、[0, π]のm個分と同じ」という事だ。これはイメージでは把握しやすいが、どう示せばよいかは経験がないと難しい。

右辺は左辺の区間をm分割しているので、左辺をΣを使ってm分割してみよう。そして区間それぞれの面積が等しい事を示せばよいのだ。

積分区間が異なっているのでθ = x -(k -1)πと置換して辻褄を合わせよう。するとsin, cos関数が複雑な形になるが、ここで周期関数と偶関数の性質を利用して右辺の形に合わせる事が出来るのだ。

この立式が出来なければ、周期関数と偶関数の性質を説明しながらグラフで概形を描いて示せばよい。

(2)

(1)の与式を観察する事で、f(x) = |x|, g(x) = (1 +cos2 x)-2 という連続な偶関数に当てはまると分かる。さらにt = nxと置換する所までは一直線に進む。

ここからが大変。積分区間に注目して、mπ≦n≦(m +1)πを利用して不等式の原型を作る。両辺に1 /nを含まれているのが邪魔なので、今度はmπ≦n≦(m +1)π の逆数 1 /(m +1)π ≦1 /n≦1 /mπ を利用して範囲の拡大を犠牲にしてmを含む形に変えるのだが、この発想が難関だ。

両辺の絶対値は積分区間内では常に正だから外されていたわけだ。なので正負での場合分けを考える必要はない。

中々先を見通しにくい式変形が続くので、誘導を信じて突き進む事が大事だ。

(3)

(2)の形から明らかに挟み撃ちの原理を使うと分かる。ここまで解けなくても(2)の与式を使って解ける。t = cos x, t = tan θと2段階で置換積分をするのが一般的だが、cos x = tan θ と置いて-sin x dx = dθ /cos2 θ とする方が速い。

第3問

(1)

反復試行の公式が使える。n回の試行の内、k回で赤が出るが、それが何回目で出るかについて組み合わせを使う。

(3)

「確率の最大値」を問われているので、7/20 *2004 ≒701という「期待値」を求めるのは誤り。勘違いしていたとしても、こんなに簡単なのは奇妙だから気付くだろう。

確率の最大値は、事象毎の確率を比べることになるので、 Pkを反復試行の公式で求める。確率の式が累乗や階乗の形であるのを活かして、隣り合う Pkをの比を取って比べる。階乗を含む式を処理するときは別の項との比を使うと上手くいくという法則は数列でもお馴染みだ。

Pk は複雑な式だが、比を取る事によりスッキリした式になる。この比が1未満に転落する直前が最大値だ。

第4問

どちらの小問も計算が大変。その一言に尽きる。考え方は易しいが、ミスなく完答出来たら立派である。

V(0) = V(1) = 0は検算に使える。また、(2)の微分についてはV'(r) = 0を「根号の項 = 多項式」に式変形して2乗して r = 1 /√2を導き、V(0) = V(1) = 0 を根拠としてV(1 /√2)が極大値を取ると示すのが楽だ。それが論証的にリスクがあるなら、V'(r) に現れる根号を「分子の有理化」してから分子だけ因数分解すればいい。

ちなみに、(2)は対称性からr = 1 /√2 なのは予想が付くので、答えだけ書いて逃げるのもアリだ。

高校数学 東京工業大学2003 (平成15)年度 前期入試問題の解説

解答例

第1問

基本的な問題。3次関数と1次関数が2つの共有点を持つならば、一点は接している。面積計算は1/12公式(ベータ関数の一種)を使うと速い。

第2問

nの数を増やして実験すれば答えが見えてくる。(2)もn = 3の時点で勘づけるので、(1)は無かった方が良かった。

一応は数列の問題である。縦と横の切り方で二種類の漸化式が生まれるので値を比較するのだが、数列で証明するのは非効率。Math Stationの方法が簡潔だ。

第3問

最大の難所は、ベクトルを使って解くと気づく事だ。

ベクトル方程式と一次独立で解くのが一般的だが、P, Qの内分比が分かっているからメネラウスの定理を使うと速い。

3xy -2x -2y +1 = 0というグラフを描くことになるが、これを変形すると9(x -2/3)(y -2/3) = 1となり、x = 2/3, y = 2/3 が漸近線の一次分数関数と分かる。

最後に面積を問うて簡単な積分を盛り込んでいる。

第4問

(1)

Math Stationのように係数を漸化式にして階乗で割って解くのは面白い。

(2)

素直にfn(x)を微分してx = 0を代入すれば良い。

高校数学 東京工業大学2019 (平成31・令和元)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

東工大数学は2016~2020年は東大・京大を上回る難易度であり、それが頂点に達したのが本年度だった。

従来のように努力や探求心を覗う出題とは打って変わって、発想力を要求する出題が多かった。昔の東大数学の様だ。

第1問

Weitzenböckの不等式が題材になっている。こういった幾何学の不等式の下限値は一般的に正多角形(正多面体)になるので、解けなくても答えだけ書いておこう。

(1)

不等式の証明だから、平方完成を利用する。与式をh, s, tで表すと、hだけが対称性が無い仲間外れなのでこれを基準に平方完成するのが筋が良い。

出題者は座標計算に誘導しているが、ヘロンの公式でも解ける。

(2)

(1)を更に難しくした問題の様に見えるが、(1)において証明すべき式が明示されているので、これを利用すれば(1)が解けなくても解けてしまう。

等号成立条件についても、(1)の等号成立条件が正三角形である事を証明できなくても、大抵は等号成立条件は正多角形なのだから堂々と使えばいい。

第2問

大まかな方針は次の通り。

  • f(x)を求めたいので、両辺を微分していく。
  • f(xy)のままでは両辺をxで微分する操作が出来ないのでt = xy と置換する。
  • |log y|は積分区間で正負が変わるので積分区間を分割する。

g(x)×∫dt」が含まれているので、これをxで微分すると再び積分関数∫dt が現れる。したがってもう一回微分する必要がある。

最初に置換した時と微分した時に左辺に1/xが出てきているのだが、分数関数の微分は式が複雑になるので両辺をx倍するのが筋が良い。

途中で行う積分計算が煩雑だ。実は、計算過程で得た式にx = 1, 2を代入した式を再利用する事で、積分計算をすべて回避できる。その点でセンスを試す大問と言える。

第3問

(1)

集合Mは複素数同士の乗除なので、zを拡大縮小と回転をしたものである。ちなみに加減により平行移動する。

ここでは縮小と右回転がなされているので、縮小によりMの個数が増えている。領域が円なので、回転に伴うMの個数の変化はない。よって|z|≦r√13と表せる。

複素数平面の知識を利用して計算するのかと思いきや、大部分は点の数え上げという地道な作業である。

(2)

集合Mに対して領域を√13倍して左回転すると考えれば良い。要するに領域の各頂点の座標に3 +2iを掛けるのだ。

格子点が領域に入っているか際どい物もあるが、図を精密に描けば、領域境界を方程式にして検証する必要はないので時短になる。この点は技巧的だ。

zは「実部と虚部が共に整数」と定義されているがL(z, w)はその定義に反している。同じ記号を使い回すのは禁じ手だろう。

第4問

これが話題になった超難問だ。まず、空間上の平面を増やしていくというのがイメージし難いのでかなりセンスが必要とされる。

多くの受験生が一問も答えられなかっただろうが、裏を返せば部分点を得やすいという事だ。答えが分からなくても次の記述によって部分点は得られるだろう。

  • 「平面を直線で分割した結果の考察」といった実験
  • 分割数が最大になる必要十分条件を示す
  • 3次元空間なので、解はnの3次式になる。「N次空間をN-1次空間で分割した数はN次式になる」と書けば探求心を評価されるかも?

(1)が解けなくても、(2)では「どれか二つの交線を平行にすると空間が一つ減るので(1)の解より1小さい」と書けば10点は得られるだろう。(3)も同じ要領で書けば5点は貰える。

(3)は余りに難しい(というか細かい)ので、(2)までを誘導を増やして出題すれば許容範囲内の難易度だった。出題者は(3)の例外処理を解かせたかったのだろうが、入試問題として機能していないので自己満足でしかない。

第5問

(1)

問題文がx > 0 で「常に」減少するのか、「ある点で」減少するのか曖昧なのが良くない。

一階微分では正負が判断できないので二階微分と極限値で評価する。

(2)

整数、数列は実験が大事。bkの具体値を求めればすぐに答えの予想が付くので、この大問だけは東工大らしさが出ている。

(1)の式と見比べる事で対数を取るのは分かるが、bk 内の階乗が邪魔だ。“差×比”型数列をS -rSによって中間項をゴッソリとキャンセルするのと同じ感覚で、階比の形にする事でキャンセルできる。 「確率の最大値」と同じ手法だ。

Mの最大値を態々既約分数で示させるメリットが分からない。今年度は出題センスが悪い。

高校化学 東京工業大学2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • (1)原子番号は陽子の個数。原子量は陽子と中性子の総和にほぼ一致する。原子量は12Cを基準とした量だから、同位体を持つ水素の原子量は1より大きい。原子量は元素の存在比で補正されたもので、同位体の区別がない。
  • (2)三重水素(トリチウム)は放射性同位体。
  • (3)予備校の間でも正誤判断が分かれた。
  • (4)クーロン力は距離の2乗に反比例する。

〔2〕

  • (2)ボイル・シャルル則はP, V, Tの関係式だ。
  • (5)モル分率の考え方で瞬殺できる。

〔3〕

  • (1)生成熱 = (生成物の生成熱の和) -(反応物の生成熱の和)
  • (2)生成熱は単体から生成する際に生じる熱の事だから、エタノールの反応式は2C(黒鉛) +3H2 +1 /2 O2 = C2H5OH +Q となる。左辺の物質の生成熱の方程式の熱量を、係数を掛けた上で足すだけ。

〔4〕

(i)

気液平衡がテーマなので、ヘンリーの法則を意識しよう。V0の数値もヘンリーの法則から出せる。

分圧の考え方から、アルゴンの注入は酸素の溶解に影響しないと気づこう。

操作毎に新しい気液平衡になる。V1 はヘンリーの法則から求められるはずだが、その為には「操作1回目での気体部分の酸素の分圧」を知る必要がある。そこで、操作前後で「ピストン内の酸素の1×105Pa での体積」が不変である事を利用して立式する。

(ii)

まるで数列の問題だ。実際、公比1/5の等比数列となっており、東工大らしさが出ている。

計算できなくても予想はできる。解答欄は2桁用意されているが、手計算なので計算を多く繰り返させるとは考えにくい。またこの手の問題は切りの良い数字が答えになっている場合が多い。

〔5〕

Kc = [X]2 /[X2] = (2nα /V)2/ {n(1 -α) /V}

である。X2が分解して同じものが二つできるので、Xのモル濃度は二つ合わせたものを2乗する。

第II問

〔6〕

(5)の様な選択肢を出すのはやめて欲しい。勉強が個人や社会にとって単なる浪費でしかないことを感じさせる。

  • (1)Cr, Mnなどの8族までの遷移元素は、その族番号が最大酸化数になる事がある。
  • (2)NH3 が配位子となって錯イオンを作るのはAg+, Cu+, Zn2+である。
  • (5)Fe3+ は基本的に赤系の沈殿を生じるが、ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウムK4[Fe(CN)6]では例外的にベルリン青と呼ばれる濃青色沈殿を生じる。憶えにくいが頻出だ。ちなみに Fe2+ では青白色であり、この色の違いを利用したのが青写真だ。
  • (6)Cu(OH)2は60~80℃で分解してCuOとなる。

〔7〕

フッ素は暴れん坊である。

(3)KClO3とH2O2 はMnO2を触媒として酸素を発生する。

〔8〕

(6)ファラデー定数は「電気素量とアボガドロ定数の積」と定義されている。

〔9〕

酸化還元滴定の典型問題だが、酸化還元反応の知識が必要で、半反応式を立てたり長い計算があり意外と大変。

硫酸が存在するのは過マンガン酸カリウムを酸性条件下の酸化剤とする為だが、解答に有効数字が指定されていないのが引っ掛けで、硫酸のモル濃度の有効数字である2桁に合わせてしまうと、この数値は計算で使用していないので誤りとなる。

総合的には難問だ。

第III問

〔11〕

  • (2)ケトン基はC-C(=O)-C、アルデヒド基は C-C(=O)-Hであり、いずれもカルボニル基の一種。
  • (4)カルボニル基は求電子性が高い為、NH2 は陽性を帯び塩になりにくい。
  • (5,6)ホルムアミドの様に、HC=O やNH2の部分だけでも加水分解できる。

〔12〕

  • (1)ナイロン6とナイロン66はいずれもカルボキシ基とアミド基を持つ。
  • (3)加水分解するとポリビニルアルコールとなり水溶性を持つ。

〔13〕

  • (2)一次構造はポリペプチド鎖を形成するアミノ酸配列、二次構造はタンパク質を形成するポリペプチド鎖同士の水素結合(α-helix, β-sheet)、三次構造はタンパク質を立体化する側鎖間の結合。ジスルフィド結合は三次構造の一つ。
  • (4)アミノ基は塩基性条件下そのままなので、中性である。
  • (5)ニンヒドリン反応はアミノ基の検出法。

高校数学 東京工業大学2011 (平成23)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第2問

2002年度第1問の類題。絶対値付き積分は頻出だ。

(1)

y = cos t とy = x sin 2t のグラフを描いてみれば把握できる。xの値によって共有点の有無が生じ、場合分けが必要だと分かる。0≦t≦π /2においてt≧0なので、cos t |1-x sin 2t|と変形してもよい。

(2)

インテグラル内の絶対値がf(x)の定積分にも影響してくる。

第3問

東進の解答の様に、分子のαを分母に押し込めて相加相乗平均を使うのが上手い。相加相乗平均を使える機会は限られているが、一般的に微分法より速い。

三平方の定理を用いる方法は処理が多くなりがちなので、Math Station の様に正接を使うのが筋が良い。

第4問

まともに論証しようとすると時間が掛かり却って得点が低くなるかもしれない。ここはバウムクーヘン分割やPappus–Guldinus定理を既知とするか、簡単に証明するのが賢い。厳密でなくとも答えを出すのが大事だ。

後期1995年度が類題。

高校物理 東京工業大学2020 (令和2)年度 前期入試問題の解説

分析

解答

[2]の荷電粒子のドリフト、[3]の気液共存線など、大学教育のウォーミングアップ的な色の強い出題だった。

[1]

二体問題は運動量保存則や相対運動や重心を意識しよう。

(d)

単振り子の周期は一般に2π√(l /g)と表せる。ちなみに単振動の周期は2π√(m /k)である。ど忘れした時は単位がs(時間)である事を利用して組み立てよう。

Qの軌道はx軸方向と平行と近似して計算する。a = -ω2x を憶えていれば組み立てられる。

  • (ア)C点は単振り子の振動中心と見做せる。
  • (イ)振動中心の速さは「振幅×角振動数」で速く導ける。力学的エネルギー保存則も使える。

(e)

運動量保存則の式は対称性があるが力学的エネルギー保存則の式はmghがあるので対称性が無いのに注意。

(g)

二体問題だから相対運動に着目するのが筋が良い。何をさせたいのか分かり難い問題文な上に計算が煩雑なので捨てても良いだろう。

(h)

重力gに慣性の加速度が加わり見かけの重力√(g2 +a2)となる。そして「十分に振幅の小さな周期運動」とあるから単振り子の公式に当てはめる。

(i)

難問。

Qが斜面上で周期運動をするという事は、斜面に垂直な方向の力が釣り合っているという事だ。これを立式する。

さらに、外力Tを加えているときにQが存在しないとするとT = Maだが、Qがあると垂直抗力のx成分が加わる。

[2]

〔C〕では荷電粒子のドリフトがテーマだった。荷電粒子は常に垂直方向に力を受けるので、電場の方向に”落ちる”ことなく、横に移動していく。直感的には予想しにくい動きなので、知っていないと難しい。

(b)

直観的に導き難いが、これはy軸を90°時計回りするとx軸に一致し、 x軸を90°時計回りするとy軸逆向きに一致する性質に由来する。

(f)

相対運動の設定なので、相対速度に着目する。そして前小問を利用して立式する。

ここで、(e)で求める文字に「F’」とダッシュが付いていることに注目。これは出題者による「(b)と比較せよ」というメッセージだ。

相対運動への深い理解が試された。

(g)

荷電粒子の動き始めの速度の向きに注目しよう。前小問において観測者から見ると荷電粒子は動き始めはx負の方向に速度を持つので、この円運動はx軸を接線に持つと分かる。

マトモに考えると難問だが消去法でも選べる。粒子はx軸方向に移動していくので9, 10は消去。5, 6, 7, 8の形は、次問(h)で直径などを調べさせるのを考慮すると、定数が定まらない(1, 2, 3, 4を包含する)ので正答である確率が低い。荷電粒子の電荷を考えると2, 4も消去。

[3]

気液共存がテーマ。2009年度東大物理で同様のテーマで出題されているので、これを参考にして問題作成したのかもしれない。数学だけでなく物理も10年以上前の東大入試を研究する意義はありそうだ。

定義される文字が多い上に文字設定も非合理的で混乱を来す。やる気を激しく削ぐ配慮に欠けた問題文だ。効率を上げる為に文中の文字の定義の部分に下線を引いたり図に書き込むと良いだろう。

(a)

化学寄りの問題。

蒸発熱は、沸点温度(T0)の液体が気体に状態変化する為の熱量。(ア)は水をその温度まで引き上げるのに必要な熱量である。

ちなみに化学では比熱(J /(g・k))、物理ではモル比熱(J /(mol・k)) が用いられる。

(e)

蒸発により水の体積が減少しているのが要所。

(f)

「仕事 = 力×距離」だが、圧力P0 が一定なのに対してバネは漸増するので注意。イメージすると間違えない。

(g)

水を T0 からT2まで引き上げる熱量も含まれる。

高校数学 東京工業大学2017 (平成29)年度 前期入試問題の解説

分析

解答例

第1問

条件(ii)の12の約数が6個だから残り一個あれば良いと分かれば速いだろう。

第2問

シンプルな問題文だが計算量は多い。

式の形から周期πを持つ事は明らかだが、関数の周期性はt = u +πなどと置換する事で厳密に証明できる。さらに分母のsinが2乗されているので、 0≦x≦π において上に凸(極値を1つ持つ)でt = π /2で線対称なのも読み取れる。

面積の最大・最小値を求めるのでf(x)の極値が知りたいが、実は積分計算はする必要がない。なぜなら極値を求めるという事はf‘(x)を求めるという事だからインテグラルを外すことになるからだ。(パスナビは分母由来の三角関数に勝手に絶対値を付けて計算しているが正しいのか?)

三角関数を含む置換積分は、分母と分子でsinとcosの組み合わせが生まれるような形に誘導するのがコツ。

関数が絶対値を含むので、定積分を絶対値の影響を受けない区間(0≦x≦π /2)と受ける区間 (π /2 < x≦π)で分けて算出する必要がある。

第3問

2001年度・第4問の類題。数学的好奇心をくすぐる面白い問題だ。試験場で実験用の紙が配られたのが珍しい。数学好きならこの手の問題は自発的に考えた事があるだろうから、東工大が知的好奇心の高い学生を求めている事が伺える。

方針は見えやすいが、とにかく計算が大変。面白さと計算量を両立させた東工大ならではの問題だ。

三角法と三平方の定理を使う方法の他、紙の辺や折り目をxy平面上の直線と見立てる方法も有力。

第4問

電数の解説が図もあって分かりやすい。

場合の数ではなく漸化式と見立てる発想が必要な難問。捨て問だ。

(1)

「cがm個含まれる場合」のΣ和を取るという方法では計算が纏まらない為、方針を運悪く誤ると台無しになるという点で悪問だ。

連立漸化式を解いて3項間漸化式を作る。二次方程式型の特性方程式で等比型を作るが、係数をα, βと置いたままの方が楽だろう。

第5問

(1)

解と係数の関係を用いて、共役複素数同士の積が1になる事を瞬時に確かめられる。二次方程式に於いては、c/a = 1であれば複素数平面の単位円上にあるのだ。

(2)

「実数係数のn次方程式は必ず共役解を持つ」という重要な性質がある。

(3)

ここまでの誘導を意識すると良い。もはや複素数平面ではなく方程式の問題だ。

高校化学 東京工業大学2018 (平成30)年度 前期入試問題の解説

分析

解説

第I問

〔1〕

  • (1)硝酸や熱濃硫酸に溶けるのはAgまでで、AuやPtは王水(濃硝酸3:濃塩酸1)で溶けるツートップだ。
  • (2)Cr2O72-は酸化数6で、Crは第6族だから最高酸化数になっている。ゆえに還元剤にはなれない。
  • (3)水溶液やその沈殿の色は、Fe2+は緑系、Fe3+は赤系が多い。赤錆がFe2O3で表される事を憶えていれば間違えにくい。
  • (5)触媒として働いて酸素を発生させるのはKMnO4 ではなくMnO2だ。
  • (6)ハロゲン化銀は感光性を持ち、金属の微粒子は黒く見える。

〔2〕

引っ掛けが含まれる難問。電気分解と電池の問題が混ざっているので、構造の区別に注意。

  • (2)塩化ナトリウムは水溶液中で電気分解しようとすると代わりに水素を生じてしまう。そこで塩化ナトリウムを融解することで水を使わないので電気分解が可能になる。その代償として大きな融解熱が必要になる。
  • (3)電池では正極に電子が供給されるので金属イオンが析出する。ちなみにボルタ電池もダニエル電池も陰極にZn, 陽極にCuを使っている。
  • (4)イオン化傾向はZn < Mnだが、これが引っ掛け。負極はZn, 正極はMnO2 だ。
  • (5)水は安定性が高いので、Agが先に酸化される。

〔3〕

周期表を広範囲で把握していないと難しいが、元素A~D自体は全て馴染み深いものだ。両性金属が多く含まれているのも特徴的な出題。イオン化傾向に登場する元素の周期表配置くらいは知っておけという事か。

加えて選択肢もマニアック。東進の分析は余りに手抜きだ。

  • (ア)3~11族は遷移金属。
  • (イ)Hgは12族。
  • (カ)13から17族まで金属元素が一つずつ減っていく。14族が非金属C, Siを含む。
  • (3)遷移元素の中で酸化数+4となるのは14族以降。
  • (4)アルカリ金属・アルカリ土類金属以外の酸化物と水酸化物は沈殿する。ちなみにZnの沈殿は全て白い。
  • (5)PbOやPbCrO4やPbI2、HgOは黄色沈殿。

〔4〕

弱酸を中和させていくと、弱酸とその塩を含む緩衝液になる。プロピオン酸は聞きなれないが弱酸であるのは分かるので緩衝液を連想しよう。

滴下後のプロピオン酸は緩衝作用により電離度0となっており、プロピオン酸ナトリウムは完全電離している。よって電離定数の式に当てはめられるわけだ。

第II問

〔6〕

(5)ヘンリーの法則が成立する気体は、溶媒と反応せず、溶解度が低いもの。

〔7〕

A, B, Cの時間経過による濃度変化を表に纏めれば分かりやすい。

Aの濃度は指数関数的に10分毎に0.6倍となっていく。反応速度式が一次関数である事から、一次反応と言えるので(5)のような半減期の考え方が成り立つ。

〔9〕

時間が掛かる捨て問。

問1~3が実験1、問4~6が実験2に関する問題なので、片方の実験に関する問題に答えとなる選択肢が2つ含まれるとは考えにくい。よって、勘で答えるなら問1~3から1問、問4~6 から1問選択しよう。

  • (2)〔4〕とやることは似ているが、弱酸(塩基)の中和滴定ではなく強弱酸(塩基)なので緩衝液として計算しない。
  • (3)滴下しているのは水酸化ナトリウムではなく、水酸化ナトリウムの水溶液(pH = 14)。

〔10〕

文字式の問題にしては簡単だった。希薄水溶液の濃度が十分小さい事から、溶液と溶媒の質量を等しいとみなすのがポイント。

第III問

〔12〕

鎮痛剤のアセトアニリドとサリチル酸メチルとアセチルサリチル酸は、メチル基とO(二重結合)を持つという共通点がある。

  • (イ)NaNO3と来ればジアゾ化だ。アニリンにHClと NaNO3 水溶液を0~5℃で加えると塩化ベンゼンジアゾニウムが出来て、それ以上の温度でフェノールに分解する。
  • (エ)高温高圧下でCO2を反応させる事でカルボキシ基を付加する(コルベ・シュミット反応)。更にカルボキシ基をメチル化して消炎鎮痛剤のサリチル酸メチルが出来上がる。
  • (オ)アミド結合して、解熱鎮痛作用のあるアセトアニリドとなる。
  • (1)ナトリウムフェノキシドは、セッケンと同じく「弱酸と強塩基からなる塩」なので、加水分解して弱塩基性となる。
  • (5)鎮痛作用を持つ物の中でサリチル酸メチルは例外的に液体。

〔13〕

オゾンを反応させたあとZnで還元する事で酸化開裂させる操作をオゾン分解という。

東工大は捻って環状化合物を出題する事が多い。分解後のカルボニル化合物はOを二個持っているのでAが環状化合物と容易に分かる。

次に、二重結合を数をxとして反応前後で質量と分子量の関係式を立てれば良い。反応前の分子式は C33H66-2x (75g)、反応後はC33H66-2xO2x (107g)となるが、分子量の桁が大きく計算が大変になるので、反応後の物質ではなく付加した酸素O2x (32g)を利用した方が良い。

〔14〕

天然ゴムはポリイソプレンから出来ており、そのままだと強度が低く、酸化して弾性を失いやすい。そこで加硫によって分子同士を架橋してこれらの弱点を補う。

〔15〕

アミノ酸Bはアスパラギン酸だ。酸性アミノ酸の側鎖のカルボキシ基を繋ぐ炭素は1または2個。主なαアミノ酸の側鎖における「炭素の節」は3は無い。

酢酸カルシウムを乾留するとアセトンと炭酸カルシウムが生成する脱炭酸反応を知らないと正答するのは難しい。脱炭酸反応には、酢酸ナトリウムと水酸化ナトリウムからメタンと炭酸ナトリウムを作るものもある。